白詰草の花冠

過去の文章を残そうと思いました。全部過去になるからね。

ただいましたい

彼の肉球は布
隣の方からいただいた端切れのような
触れて寝ます
その毛羽だった手のひらに
幼い、白く細く、ふやけた魚みたいな指を重ねて
自然と、こたつのようにほっぺたがぼわんとあかく灯る

彼を貰った2歳の秋にかえりたい
たくさん食べられないいじわるな妹に大きなおにぎりを
顔に押し付けられた、あの日


地球は、よいところです
私のすんでいた所からは決して蒼くはなかったし、酸素は多すぎるし、エネルギーはオゾン層でねじ曲げられ加工され使える資源も少ないけれど
それでも強すぎる酸性雨に私の弱い肌が爛れることもありません
地球は、よいところです
できの悪い私を許して下さい、パパ、ママ…

重力と湿気に悩まされる彼の毛をそっと上へ撫でてやると
彼のツルピカの瞳の中に、私が遊びに行っていた
その私の瞳の中に彼も遊びに来ていた
彼の中の私の瞳から彼が一粒一粒転げ落ちていった
海水のせいで唇が痛い
なめると、しょっぱいというよりも油物を食べたあとのもったりした水みたいな
塩うがいの中途半端な味がしていっこうに喉は潤わなかった
眠られなくて、多すぎる酸素に辟易

爛れてもいい、コップ一杯の強すぎる酸性雨
パパ、ママ
帰りたい、かえりたいの、かえしておねがい