白詰草の花冠

過去の文章を残そうと思いました。全部過去になるからね。

たこ焼き屋で出会った人たちの記録①

2月6日(水)

はじめて見かけた日からずっと気になっていた

場末感の漂うたこ焼き屋さん。

気になったまま3年が過ぎていた。

 

その日はなんとなく思い立って、

たこ焼き屋のドアをあけた。

なんか知らんけど、足が向かっていた。

そういうことよくある。

 

中には、たこ焼き屋の店主、その息子、

あとは常連客が5人いた。

いつも、たこ焼き屋でたむろしているらしい。

 

息子も座って酒を飲んでいて、常連のツレかと思った。

席に案内される。

席、といってもテーブルは1つしかなくて、

常連のみなさんに混ざって座る。

店全体が、常連のみなさんで満たされている。

 

「お姉さん座るから!ほら、ここあけて!」

「いや、こっち座ってもらったほうがええだら(三河弁だ…)」

「カズくん(?)の隣すわってもらい!」

 

みたいな感じで、結局カズくん(?)のお隣に座る。

カズくん(?)は最近、看護師の女性と別れたらしい。

その前に付き合っていた女性はきつめの美人で、

常連の女性いわく「あの人は合わないと思ってた」

 

最近別れた看護師の女性は「前の子のほどきれいではなかった」

カズくんは付き合う女性のランク()が激しく上下するらしい

常連の女性いわく「極端なのよ」

 

カズくんは耳に銀色のピアスをしていて、

なんだかんだモテるタイプのようだった。

仕事をさぼるのも上手くて、常連のおっちゃんいわく

「い~~っつも同じSAで長時間とまっとる!会社に電話したろか!」

(突然の小芝居、おっちゃんはすぐ小芝居をはさむ)

「あっもしもし~おたくの会社の~トラックなんですけど~

 い~っつも○○SAに長時間駐車してて~~

 ちゃんと仕事できてるんですか~~?

 しかもい~~っつも同じナンバーなんですよ~~」

(小芝居の時だけ、以上に語尾が伸びる)

 

でもカズくんは全然自分では話さない。

これだけカズくんのことを書いたけど、

カズくんが喋ったのは一言だけである。

 

「いいよ」

 

おっちゃんが「この兄ちゃんが飲み物おごってくれるってサ!」という発言で

(カズくんは何もいってない。たばこを吸っていただけである。)

私は、カズくんにドリンクをおごってもらうことになったのだ。

「いやいやいや…」と遠慮していると

「ほら~~なんがいいの!選んで!」と急かされ

「何がありますか…?」と聞いてしまう(実際のどもかわいていた)

「コーラもサイダーも牛乳もあるよ!」

「あっじゃあ三ツ矢サイダーで…えっいいんすか…」

 

この時にカズくんが発した言葉が

例のたった一言「いいよ」だったのだ。

 

三ツ矢サイダーください」

「欲しかったら自分でとりな!」

冷蔵庫に案内される。

 

ちょっと嬉しい気持ちで三ツ矢サイダーを手に取ると

その奥にビンのマミーがあった。

 

「お~マミーもあるやん」とおっちゃん

「…マミーに変えてもいいですか」

図々しい発言をする私

「2本とももらったらええんや!1本は持って帰ってもいい!」

さらに図々しく気前のいいことをいうおっちゃん

 

帰りは知らない間に、私を駅まで車で送る話になっていて

「次の電車が22時15分だから…22時すぎに出ようか!」

と元気よく当たり前みたいに常連の女性がはなしかけてくる。

 

賑やかで騒々しくて気遣いのない気遣いが横行する場所だった。

みんな本当に優しくて、勝手だった。